| (溢れ出る愛と大さじ一杯の寂しさに、ひと摘みの悪戯心をふりかけた行動が成功すれば、いつもすぐさま気持ちが反映される表情は満足感を隠そうともしない。 妹から一歩二歩と離れると、演台に置かれた広蓋にある目録と受け取った目録を交換して、改めて妹の前に所定の距離で向かい合う。 一度小さな深呼吸をしてから、ゆっくりと目録を広げて)
2016年度卒業生より、在校生へと贈る記念品として 一つ、寮中庭にライラックの木の植樹を行います。 一つ、DAルームのこたつとこたつ布団等の新調を行います。 一つ、在校生全員にハンカチを贈呈します。
ライラックにはたくさんの花言葉があります。 楽しかった学院生活ばかりが次々と思い浮かぶ『友情』『大切な友達』『青春の喜び』 愛しい姉妹との日々が色鮮やかによみがえる『出会いの喜び』『愛の芽生え』『美しい契り』 わたしたちの高等部での三年間の幸せな『思い出』がすべて籠められています。 あとひと月もすれば、色褪せぬ思い出の数だけ美しい花が見られるでしょう。 そして来年、再来年には皆さんの思い出の分もライラックの可愛らしい花が咲き誇ることと思います。
DAルームは、1年を通して多くの生徒たちに憩いと癒しを提供してくれる場所でした。 特に冬場のコタツはわたしたちにとって、ゆっくりと寛ぎながら友人たちとの交流を深める場所であったと思います。 そこで、わたしたちは大事な社交の場に感謝と労いの気持ちを籠め、コタツとコタツ布団を新調させていただきます。 新しいコタツがまた新たな思い出を積み重ね、これまで同様――いえ、なお一層、DAルームが過ごしやすい素敵な空間になれば幸いです。
以上の二点は、わたしたちが過ごしてきたこの歴史と伝統ある学院とこれまで形作ってきてくださった方々への感謝と、 今ここにいる1,2年生も含めたこれからの学院を担っていく人たちを支える存在に、これからわたしたちもなっていくという決意の証です。 そして最後にお渡しするものは、わたしたちが顔も名前も知っているあなたたちだけのものです。
可愛い妹たちのことを想って、それぞれの寮の色のハンカチに、卒業生全員で皆さんのイニシャルを刺繍しました。 だけどハンカチが皆さんの手元に届くのは、まだこれからのことだと思います。 もしこの卒業式で泣いてしまう子がいたら、その涙も拭いてあげられない最後まで不出来なお姉さまたちを許してね。 その代わり、必要なときには絶対にこのハンカチがみんなに勇気と力を与えられるよう、たくさん願いを籠めたから。
以上の三点を、記念品として贈呈致します。
敬愛する母校と親愛なる妹たち、そして最愛の妹へ――感謝と更なる愛を込めて。 ごきげんよう。
平成二十九年三月十八日 卒業生代表 愛宕絵美璃
(目録を読み上げ終えて、安堵と寂しさとその他改めて整理できたいろいろな感情を小さく小さく纏めた溜息を、ふっと吐き出してスッキリした表情。 元の形に畳んだ目録を、妹の手を取りながら先ほど言葉にした気持ちと一緒に託すと、にこりと微笑みかけてから一歩離れて深くお辞儀。 しかし顔を上げれば、わたしもちゃんとできたわよ?なんて姉らしくない言い分がありありと見てとれるしたり顔)
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